甲斐みのりわたしのまちのたからもの

中部地域のさまざまなまちを文筆家・甲斐みのりさんが訪ねます

見た目も味も抜群の
ご当地かき氷を味わう

旧東海道と「桑名かき氷街道」(三重県桑名市)

September 03. 2025(Wed.)

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歴史深い宿場町がかき氷のホットスポットに 旧東海道と「桑名かき氷街道」(三重県桑名市)

かつては東海道五十三次の42番目の宿場町・桑名宿として栄えた三重県桑名市。現在の名古屋市熱田区に位置した宮宿と東海道で唯一、海路で結ばれ、行き交う人々で賑わった歴史のあるまちです。
そして近年、夏季になると「桑名かき氷街道」の開催で、多くの人が訪れることでも注目を集めています。

今回は、「桑名かき氷街道」に参加の店舗を訪れ、2025年に登場のかき氷メニューを味わいました!

夏の3か月間限定開催
桑名のかき氷の祭典
「桑名かき氷街道」

2021年から始まったスタンプラリーイベント「桑名かき氷街道」。例年、7月1日から9月30日までの3か月間と、ゆったり開催期間をとっているのも林さんの思いから。
「単発的なイベントにすれば、その数日間はわっと人が押し寄せ、お祭りのように賑わう可能性もあるでしょう。けれども、気候の変化で暑さが長期化している今、3か月という長い期間を設ければ、地元の人もこの時期を楽しめるし、繰り返し桑名に足を運んでくれる人もいらっしゃるはず」
そんな林さんの想像通り、参加店で配布されるスタンプラリーの台紙を手に桑名のまちを歩き、かき氷巡りをする人の姿も年を重ねるごと増えてきました。

スタンプ5個ごとに、林さんが考案したご当地キャラクターの限定グッズを1つプレゼント。先着順・数限定となりますが、スタンプを全種類コンプリートした人にも、特別なプレゼントが用意されています。
また、せっかく桑名を訪れたのだから、かき氷を味わうだけでなく、観光名所に立ち寄ったり、まちなか散策を楽しんだりする人の姿も見られるようになりました。

そうしてこのイベントを多くの人が知り、参加者も増えてきました。同時に、桑名市内の参加店の意識もどんどん積極的なものに変わってきたようです。料亭、レストラン、和洋菓子店、茶店・カフェ・喫茶店…。さまざまな店が毎年工夫を凝らして、味も彩りも豊かで楽しげなかき氷を提供しています。

今回、林さんにご案内いただき、「桑名かき氷街道 2025」にエントリーしている2つの参加店を訪れて、4種類のかき氷を味わいました。

林 雅也さんとお話しをしたのは「THE FUNATSUYA」のバンケット「THE RIVER ROOM」。
部屋からは、ゆったり流れる揖斐川を臨む。

「THE FUNATSUYA」

まずは、明治時代創業の料亭旅館がルーツのレストラン「THE FUNATSUYA」です。

1875年、東海道五十三次「桑名宿」大塚本陣の跡地で開業したのが料亭旅館の「船津屋」。川端康成や志賀直哉などの文人にも愛され、泉 鏡花の小説「歌行燈」の舞台にもなりました。
2010年、これまでの歴史と伝統を受け継ぎながらも「THE FUNATSUYA」として、和食だけでなくウェディングや洋食にも力を入れるように。ランチやスイーツビュッフェが始まったのをきっかけに、地元の方々も利用するようになり、より幅広い客層に愛される店に変わっていったそうです。

皇族や文人が利用し、泉鏡花の小説の舞台にもなった。
ウェディング会場やイベント会場として使用される。
「桑名かき氷街道」やスイーツビュッフェの会場にも。

「THE FUNATSUYA」は「桑名かき氷街道」には初回から参加しており、今年で5年目。それ以前から夏のメニューとしてかき氷を出していたそう。津市から仕入れる氷を中部コーポレーションの機械で削ることで、きめ細やかで口溶けがよく、頭にキンとした刺激がないかき氷ができるのです。

メニューは毎年変え、前年の12月頃から試作を開始。流行を反映したり、自分たちが食べたいと思うものにチャレンジしたりと、試行錯誤して完成させます。
2025年は7月1日(火)〜9月25日(木)までの期間で、月ごとに一部のメニューを入れ替えながら合計8種類のかき氷を提供。今回、取材時に提供されていた中の3種類をいただきました。

「150周記念抹茶」
船津屋の創業から150周年を記念したメニュー。名古屋にある老舗日本茶専門店・妙香園の抹茶を使用し、中にあんこ、わらびもち、上には羊羹が乗っています。周年を記念するお祝い感たっぷりのかき氷です。

「マンゴーラッシー」※2025年7月限定メニュー
マーブル状にかかったマンゴーとヨーグルトソース、その上に乗る宮崎産マンゴーの果肉に胸が高鳴るかき氷。食べ進めると、中にもカスタードとマンゴーが入っています。

「ドバイチョコレート風」※2025年7月限定メニュー
濃厚なチョコ氷にピスタチオエスプーマやパンナコッタ、生チョコを贅沢にトッピング。ケーキのような華やかさとサクサクとした食感も楽しめます。

いずれのかき氷も、ひとつで何層もの味わいを楽しむことができて、食べ終えたあとの充足感もたっぷり。毎年夏の間、繰り返し通いたくなる華やかさがありました。

150年の歴史があり、今も変わらず格式をたたえているTHE FUNATSUYA。かき氷を通して地元の方にも観光客にも、さらに身近な存在に近づいたのではないでしょうか。


THE FUNATSUYA
https://www.thefunatsuya.com/
(Instagram)
https://www.instagram.com/thefunatsuya/

左から「150周記念抹茶」「マンゴーラッシー」「ドバイチョコレート風」。
右の2点は2025年7月提供のメニュー。
「桑名かき氷街道」参加者の中には、1日に一人で
数種類を注文する強者もいるのだとか。

「ゆめの菓 あきぞう」

SNSで紹介されている「桑名かき氷街道」の参加店を見る中、真っ先に「食べたい!」と声をあげたのが「ゆめの菓 あきぞう」のかき氷。その名も、桑名とくまをかけた「くま名ちゃん」。
私がもともと、動物をモチーフにしたお菓子やパンが好きだということもありますが、和菓子店が桑名の名産品を使ってかき氷をつくっている点にも惹かれました。

ゆめの菓 あきぞうには、常時50種類ほどの和菓子が並んでいます。桑名は城下町で老舗の和菓子店がたくさんある中、店主の藤本安貴さんは、和菓子やパッケージに愛らしさを取り入れることにしたのだとか。藤本さん自らデザインしたメッセージカードや掛け紙は、どれも愛情のこもった温かな雰囲気。コーヒー餅や氷室バーなど工夫を凝らした和菓子や和菓子のケーキなども取り揃えています。ちなみに象をあしらったロゴマークは、林 雅也さんの会社が手がけたそうです。

オープンは2008年。ひっきりなしに
地元の人がお菓子を求めに訪れる人気店。
店主の藤本安貴さんは、名古屋や四日市の和菓子店で
修業を積み、25歳で地元の桑名で店をオープン。

さて、肝心のかき氷「くま名ちゃん」です。
耳は同店名物のかりんとう饅頭。かんざしのように頭にのっているのは、桑名産のお米を使った団子。氷の中には、桑名「のらくら農園」のいちごを使ったシャーベットと、こだわりのバニラアイスが隠れています。ボリュームはたっぷりですが、それぞれの素材がしっかりおいしいので、ぺろりと食べられます。

歴史あるまちの中、女性和菓子職人ならではの感性で生まれた愛らしくておいしいかき氷。この先もどんなものが登場するのか目が離せません。


「ゆめの菓 あきぞう」
https://akizo.jp/
(Instagram)
https://www.instagram.com/akizo_sweets/

目にも愛らしい「くま名ちゃんかき氷」。
かりんとう饅頭や団子を使っているのは、
和菓子店ならでは。
自家製のこしあん入りの「かりんとう饅頭」が人気。
「桑名かき氷街道 2025」
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