
中部地域のさまざまなまちを文筆家・甲斐みのりさんが訪ねます
自分たちの暮らしは
自分たちで楽しく!
那加公園エリア(岐阜県各務原市)
May 08. 2026(Fri.)
ー前回までの記事はこちら
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のどかな公園からまちをどんどん面白く 那加公園エリア(岐阜県各務原市)
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つながって実現する!“楽しみ”を生むコミュニティ 那加公園エリア(岐阜県各務原市)
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人・モノ・コトが混ざり合う“まちの交民館”那加公園エリア(岐阜県各務原市)
岐阜県各務原市は、現存する国内最古の飛行場があり、全国有数の航空産業のまちとして知られています。近年、大きな2つの公園「学びの森」「各務原市民公園」を中心とする“那加公園エリア”で、まちを盛り上げようとする機運が高まり、個性ある人々がさまざまな活動を始め、まちに変化が生まれています。
各務原市を拠点とするデザイン会社「リトルクリエイティブセンター」の高野直子さんにご案内いただき、地域で活躍する方々との出会いやまち歩きを楽しみました。
今回は、高野さんおすすめの那加公園エリアにある3つの店をご紹介します。


カクカクブックス
店主の尾関幸治さんは、元書店員。2022年に独立し、地元各務原市で個人書店をオープン。開業に当たっては、「かかみがはら暮らし委員会」のメンバーが手伝ってくれたそうです。
「今の各務原市では、委員会のメンバーが、いつもどこかで何か作業をしていて、そこにみんなが手伝いに行くんです。この店の内装も、主要な部分は葉山瑛介さんの『PEP UP CIRCLE』にお願いしましたが、委員会のメンバーも手伝いにきてくれて。そこから交流が深まりました」
内装はもちろん、尾関さんの視点でセレクトされた、暮らしや趣味が広がる本のセレクトも素敵。
書店に隣接するスペースでは、看板猫のちゃちゃがお出迎え。購入した本や、棚に置かれた本をちゃちゃと一緒に読むことができる、猫好きには至福の空間!
「ちゃちゃがいることで、本にはあまり馴染みがないけれど、猫を目当てにご来店される方もいます。それでもまずは、この場に来ていただくことが大切なので。ちょっとずつ知ってもらって、日常的に本を買って読んでくれる人が増えたら嬉しいですね」
またゆっくり本を選びに、そしてちゃちゃに会いに、何度でも訪れたいと思います。
カクカクブックス
https://kakukakubooks.stores.jp/
https://www.instagram.com/kakukakubooks/


八百屋を改装して書店に。


好きな本を見つけやすいようにと、多くが平置き。


繰り返し通いたくなる素敵な書店。
isu bakery & cafe
私はもともと、まちに根付く店でパンや惣菜やおやつを買って、近くの公園でピクニックがてら食事をするのが大好きなので、すぐ目の前に各務原市民公園がある「isu bakery & cafe」のシチュエーションは理想的。天気がいい日はパンを買って、公園で青空ランチを楽しみたい!
それから、ゆったりとしたイートインスペースがあるので、友人や家族連れ、もちろんひとりでも、さまざまなシチュエーションで地元で気軽に集まることができる店と評判なのだそう。
ここは、まちづくり会社「OUR FAVOLITE CAPITAL」から借り受けて、店主の宮崎翔伍さんが2024年に始めたパン屋。以前は肉屋だった建物を改装して、天井の一部を抜いて2階まで吹き抜けの開放的な空間が広がっています。
ハード系のパンも、惣菜パンや甘いパンも、種類も豊富なうえにどれもおいしくてたちまちファンに。特に一番人気というクリームコロネは、カラメリゼされた表面のガリッとした食感が心地よく、生地の香ばしさやほろ苦さと濃厚な自家製クリームの組み合わせは、一度食べたら忘れることができません。
isu bakery & cafe
https://www.instagram.com/isu_bakery.cafe/


まちづくり会社の仲介でスタート。


甘いパンまで、種類豊富なパンが並ぶ。


ほかにはない食感。持ち帰りはもちろん、
イートインスペースで味わうこともできる。
肉の大和屋
約100年近く続くまちの精肉店。飛騨牛や岐阜県産黒毛和牛をはじめ、新鮮で質のいい肉が、ショーケースに整然と並べられています。今は3代目から5代目まで、祖父・父・孫と3代揃って店を守っています。
5代目の植田英雄さんは、前記事で紹介した「まちの交民館十’|TEN」の葉山さんやisu bakery & cafeの宮崎さんと同じ年齢。これからまちを担う若手です。
2年前から始めたのが「肉吸い」。関西風のかつおだしで炊き上げた薄切りの牛バラ肉がたっぷりと入っています。ほんのり甘く、旨みがぎゅっと詰まった脂がスープに溶け出して、しみじみとおいしく贅沢な味わい。
「『マーケット日和』に感化されて、店先でも食べられるメニューを考えました。肉吸いは大阪の名物ですが、うちの肉をどう生かせるかと考えたら、肉吸いのさっぱりした加減と牛バラが合うんじゃないかなと。1年前にはどて煮も増やしました」
イートインできる肉吸いやどて煮を始めたことで、食卓用の買い物にやってくるだけでなく、別の用事や散歩のついでに、ちょっと立ち寄るお客さまも増えたそうです。カップに蓋をして持ち運びもできるので、テイクアウトも可能。最近は、肉の専門店を利用したことがない人も増えている時代ですが、店先で手軽に味わえる名物の品ができたことで、間口も広がりました。新しい店だけではなく、肉の大和屋さんのような老舗でも、新たな試みが始まっています。
肉の大和屋
https://www.instagram.com/nikunoyamatoya/




旨みがぎゅっと染みて、体がぽかぽかに。


まちを楽しくする「人」の存在
岐阜のローカルメディアで取材を重ね、岐阜を知り尽くした高野直子さんの案内で巡った各務原市の那加公園エリア。今回訪れることができたのはほんの一部で、高野さんも「まだまだ案内したい場所がたくさんあります」とおっしゃっていました。
今回感じたことは、「公園から始まるまちづくり」を軸に、官民がよい形で連携し、頼もしい人たちの存在が際立っていたこと。かかみがはら暮らし委員会の長縄さんや、まちの交民館十’|TENの葉山さんをはじめ、人やものごとをひっぱる力のある多くの人の存在を感じることがきました。
誰でも利用できる公園が文化を生み出す土台となった。だからこそ、岐阜県各務原市には「自分たちの暮らしは、自分たちで楽しくする」、その心根が広がっているのでしょう。私も自分の心の中で、“自分なりの暮らし委員会”を育てていきたいと思うのでした。





