甲斐みのりわたしのまちのたからもの

中部地域のさまざまなまちを文筆家・甲斐みのりさんが訪ねます

また訪ねたくなる
伊賀で見つけた、愛され続ける“宝物”たち
(三重県伊賀市)

September 04. 2026(Fri.)

ー前回までの記事はこちら
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本と旅人が出会う、伊賀の新しい名建築「SAKAKURA BASE」へ(三重県伊賀市)
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名建築に泊まるスペシャルな体験(三重県伊賀市)
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建築を目印に伊賀のまちを歩く(三重県伊賀市)

今回の三重県伊賀市の旅は、坂倉準三氏の建築を訪ねることから始まりました。まちを歩いていると、建築以外にも気になる店や人の営みが自然と目に留まります。古い建物を大切に受け継ぐまちには、古いものを慈しみながら新しい魅力へとつないでいる人たちがいました。

今回立ち寄った古物店や長く愛され続ける洋食店もまた、伊賀というまちを好きになった理由の一つ。旅の途中で出会った、とっておきの二軒をご紹介します。

k-tools

古物店「k-tools」は、MARU。architectureのお二人からも「ぜひ訪ねてみてください」と教えていただいた一軒です。

店主の山下真有美さんは、隣町で古物店を始め、その後この場所へ店を構えました。
「子どもの頃から古い家で暮らしていたこともあって、新品のきれいなものより、少し朽ちていても物語をまとったようなものに惹かれていました」
京都での仕事を辞めて地元へ戻ったとき、「自分が心から楽しめる仕事を」と考え、ずっと好きだった古いものを扱う店を始めたそうです。

「仕入れでは直感を大切にしています。最近は買取依頼のお客さまも増えてきて、思いがけないものや、まだ知らないものと出会えるのが本当に面白いですね」

店内には、日本や海外から集めた家具や器、小さな道具、用途もわからない不思議な品まで、さまざまなものが所狭しと並んでいます。それでも雑然とした印象にならないのは、山下さんの審美眼とディスプレイの妙なのでしょう。
しゃがみ込んで棚の奥をのぞいたり、引き出しを開けたり、つま先立ちで高い棚を眺めたり。気づけば宝探しをするような気持ちで店内を何周もしていました。

窓の向こうには、国道越しにのどかな緑の景色。長い時間を旅してきた暮らしの道具たちが、次の持ち主との出会いを静かに待っているようでした。


k-tools
https://www.instagram.com/ktools1607/

物語が刻まれているような古物を愛する
「k-tools」オーナー・山下真有美さんとの
会話も楽しい。
家具の引き出しの中にも、どんなふうに
使われていたのか、想像するのが
楽しい雑貨類が。
思わず手に取りたくなるものばかり。

グリルストーク

食事で立ち寄った中の1軒が、1956年創業の洋食店「グリルストーク」。店名の「ストーク」は、幸せを運ぶ鳥・コウノトリに由来しています。

創業以来、大切に継ぎ足されてきたデミグラスソースは、この店の何よりの宝物。ビーフシチューやハヤシライスなど、多くの料理に使われ、牛肉や玉ねぎ、赤ワインのうま味が幾重にも重なった深い味わいを生み出しています。

この日いただいたのはオムライス。目の前に運ばれてきた瞬間、「わあ」と思わず声がこぼれるほど美しい一皿でした。つややかな卵の中には、同店自慢のビーフシチューの牛肉を刻んで入れたケチャップライスが。そこへ濃厚なデミグラスソースがやさしく寄り添い、一口ごとに幸福な気持ちになります。
昔ながらの固めに仕上げた自家製カスタードプリンも、どこか懐かしく、食後まで心を満たしてくれました。

ランチは気軽に、夜はコース料理でゆっくり。一軒で日常も特別な日も受け止めてくれる懐の深さがあります。昭和の趣が残るクラシカルな店内、温かな接客、丁寧につくられた料理。そのすべてに、長く愛され続けてきた理由が感じられました。


グリルストーク
https://grillstork.com/

レンガを積み上げた入口や木の看板が趣深い外観。
創業以来継ぎ足しで作るデミグラスソースと
つややかな卵をのせた、美しいオムライス。
天井が高くゆったりとした空間の2階席。

時代を越えて受け継がれる建築が、
まちの物語に

かねてより訪れたかった「SAKAKURA BASE」を中心に巡った今回の伊賀市の旅。
建築を目当てに歩いていると、その先で歴史や人、暮らしに出会います。
伊賀市もまた、そんな"寄り道”が似合うまち。心に残っていたのは、建物そのものだけではなく、その建物を大切に守り、今も使い続けている人たちの思いでした。
だからこそ、このまちの建築は、今もいきいきとした表情で旅人を迎えてくれるのだと思います。

旧上野市庁舎 SAKAKURA BASE
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