中部和菓子図鑑

高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介

上田のまちを支えた果敢な老舗 みすゞ飴本舗
飯島商店・長野県上田市

April 12. 2023(Wed.)

穀物商から飴屋に
そして信州を代表する企業へ

飯島商店は江戸から明治にかけて、「油屋」という名前の穀物商でした。明治維新後の文明開化の時代には、上田は全国でも有数の蚕の産地として発展し、鉄道が開通して大いに賑わいました。鉄道がこれからのインフラの要になると考えた当時の当主により、現在の上田駅前に店舗を移転しました。
明治中期に大きな台風が関東を襲い、東京・深川では周囲の田んぼのお米が水に浸かってしまう大被害が発生します。飯島商店の仕入れ先である農家から、冠水した米を活用する方法はないかと相談されたのが新進気鋭の五代目当主・飯島新三郎でした。彼が考え抜いたアイデアが、冠水部分を削った米からデンプンを精製して、それを原料に水飴を作ることでした。ちょうどキャラメルが普及しはじめた時代と相まって、水飴原料を作る飯島商店は事業を拡大することになります。さらに、寒天が信州の特産品であることに目をつけて、水飴と寒天で作る乾燥ゼリー菓子の製造に着手。
新三郎は、信州らしい飴を作ることができないだろうか、と発想をめぐらします。信州は当時からフルーツの王国であり、一年を通してさまざまなフルーツが作られていました。そこで、それまでの水飴と寒天にフルーツを加えた飴を作ろう!と決意。明治末期には完成し、販売を始めました。現在のみすゞ飴はこうして出来上がったのです。
それを契機に、飯島商店は1919年に株式会社に。その後、ジャム製造に成功したり、東京に工場を建築したり、また上田城櫓の復元を目指す市民運動を立ち上げるなど、上田の町づくり活動の中心的役割を担っていきます。こうしたスピリットは現在に脈々と受け継がれ、文化財に指定されている上田本店の建物とともに信州を代表する和菓子屋として広く愛されています。

ひとつひとつ丁寧に和紙で包まれた
みすゞ飴の箱を見るだけで気分が上がる!
みすゞ飴は箱売りのほか、バラ売りもされており、
地元の子どもたちが買いに来ることも。
※2023年3月末現在休止中。近日再開予定。
店舗は、駅前から上田城に向かう
ゆるやかな坂道に面している。
宝石のようにキラキラと輝くみすゞ飴。

【店舗おすすめ】「生みすゞ飴」

「みすゞ飴」は乾燥させてオブラートに包んだ商品ですが、この「生みすゞ飴」は、乾燥させず、オブラートに包む前の状態のみすゞ飴です。
乾燥させていないので、フレッシュな風味、そして独特のみずみずしい食感を楽しむことができます。バリエーションも豊富で、あんず・うめ・さんぽうかん・ぶどう・もも・りんごの6種類の味があります。通常のみすゞ飴ほど日持ちはしませんが、冷蔵品で1週間程度の賞味期限なので、6種類の果物の味わいをご家族みんなで比べて楽しむことができます。果実をそのまま飴に仕立てた味わいと食感です。

天然の果物の色がきれいに映えて、
自然の色の美しさに感嘆する瞬間。
「生みすゞ飴」同様に、
自然の食材の美しさが映えるジャム類もおすすめ。

店舗情報

みすゞ飴本舗 飯島商店
JR上田駅のお城口から歩いて数分のところにある上田本店。1924年に建てられた大正期の洋館で、国登録有形文化財に指定されている。石目造りの重厚なファサードは、上田の町のランドマークとなっており、中に入れば天井高のある洋館建築、縦長の窓から入る陽光、クラシックな照明、アンティーク時計やピアノなどの装飾が独特の空気感となってわたしたちを迎えてくれる。

※掲載の写真は、2023年2月下旬に撮影したものです。撮影後に一部内装が変更されています。ご了承ください。

MAP

〒386-0012長野県上田市中央1-1-21
電話番号:0268-75-7620
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