中部和菓子図鑑

高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介

「石ごろも」
御菓子司 喜世栄・長野県長野市

February 07. 2024(Wed.)

キャンディ包みがかわいい
小さくて後味すっきりの
和菓子

喜世栄を代表する銘菓といえば、誰しも「石ごろも」を挙げるでしょう。
自家製のこしあんに丁寧に糖蜜をからめたもので、キャンディ包みされている佇まいがレトロでかわいらしくもあります。お店によっては「松露(しょうろ)」の名前で出されているお菓子。
周りのすり蜜がカリッとした食感になっており、噛んだ瞬間に甘みが広がりますが、こしあんの後味はすっきり。このバランスが「石ごろも」の特徴です。後味が心地よいお菓子というのは珍しいもので、口溶けがよく、すーっと消えゆく感じが、なんともはかない存在感なのです。色は白・ピンク・緑の3色で、緑は抹茶味。このほか、季節限定のフルーツバージョンもあります。

小さく丸くまとめられたこしあんは、数日かけて乾かし、水分を飛ばします。それを箸で取って、すり蜜をかけ、乾けば完成。こうして書くといとも簡単なように思えますが、実際はすり蜜のやわらかさや薄くかけるタイミングなど、熟練の職人技がなければ完成しません。砂糖水を煮詰めて白くなるまで擦り、冷やして完成させるすり蜜は、こしあんにかける時に再び温めますが、この温め方や水分の量は職人によって微妙に異なるのだそう。
「簡単にやっているように見えると思いますが、毎回緊張してやっていますよ」と語るのは、3代目主人の太田潤一さん。すると息子で4代目の雅士さんは「父と私でも違いますし、祖父と父も違います。それくらい繊細な技術なんです」と付け加えます。
あんをすり蜜で包むシンプルなつくり方がゆえに非常に難しく、現在つくっている和菓子屋はめっきり減ってしまったのだそう。
そんな生産現場を拝見した後で「石ごろも」をいただくと、すり蜜のぎりぎりの薄さとカリカリした食感、こしあんの上品さ、食べた後のはかない味わいは、まさに職人技から生まれているのだと実感することができました。

自家製のこしあんは、ラグビーボール
のように整形し、数日かけて乾かす。
すり蜜を火にかけてあたため、
ちょうど良い硬さになるまで練る。
こしあんをお箸で取って、ひとつひとつ
すり蜜をスピーディーにくぐらせる。
シートの上にのせて、一晩乾かす。
いちごあん・梅あん・柚あんなど、石ごろもの
フルーツバージョンが冬から春先に販売される。

店舗情報

御菓子司 喜世栄(きよえ)
善光寺の参道を進み、山門の手前で左側の細い路地に入ると看板が目に入る。和菓子をつくり続けて80有余年、地元のお客さまから善光寺参拝の観光客まで、多くのファンを持つ。昔ながらの和菓子である石ごろもをはじめ、お茶席の生菓子、長野らしくおやきも常備。日々のおやつから特別な日のおもたせまで、幅広いラインナップが人気の秘訣。

MAP

〒380-0861長野県長野市横沢町653
電話番号:026-232-7396
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