高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介
時代ごとに柔軟に
挑戦し続ける名店
瑞宝軒・三重県亀山市
May 15. 2024(Wed.)
銘菓をしっかり守り
新しいものも
どんどん取り入れる
瑞宝軒の創業は江戸末期。屋号は「角屋」でした。創業者の名前が角屋留吉だったことはわかっていますが、創業の正確な年数は記録に残っていません。現在まで受け継がれてきた銘菓「亀乃尾」を開発したのも角屋留吉でした。
かつては旧東海道沿いに店を構え、菓子屋として商売をしていましたが、明治時代中期の1890年、日本国有鉄道(国鉄)が亀山に開通することとなり、亀山駅の発展を町中が期待していた時、角屋も駅前の現在の場所に移転をすることになりました。そして店舗の名前は、初代亀山駅駅長に「瑞宝軒」と名付けてもらったのだそうです。
「亀乃尾」を看板商品として、駅前という好立地も追い風になり、それは繁盛したそう。
明治時代に、当時めずらしかったパン屋をいち早くはじめるなど、ニーズに合わせて柔軟に時代の波を越えてきた瑞宝軒。さらに大正時代になると洋食の食堂「さつき」をスタートさせ、マドレーヌなどの洋菓子や焼き菓子をつくるようになっていきます。
多くの人が集い、活気のあった亀山駅前で、和菓子、洋菓子、パン、洋食とどんどん事業を広げ、ビルまで建てて大繁盛でした。
そして昭和・平成・令和と時代は移り変わり、2021年に亀山駅前再開発計画のタイミングで、瑞宝軒の建物も現在の店舗へと姿を変えました。
古いものと新しいものを常にミックスしながら、歴史を守りつつ、次の時代へ向けて商品をつくり続けています。
【店舗おすすめ】「龍乃掌」
日本フードアナリスト協会が選ぶ「JAPAN FOOD SELECTION 2023」においてグランプリを獲得したのが、バウムクーヘンの「龍乃掌」。
サクサク感としっとり感が年輪の中にうまく混ざっている不思議な食感で、軽やかな味わいが大人気。
縁起のよい龍をイメージし、掌に持つ宝珠のごとく一層一層が丁寧に焼き上げられており、ハードタイプとソフトタイプがあります。プレーンをはじめ、亀山抹茶や和紅茶など、数多くのシリーズを生んできました。
三重県の酒蔵「義左衛門」の酒粕を使ったものや、ダークショコラ、発酵バター、キャトルフロマージュなど、ちょっと変わり種のタイプまで、通好みのラインアップも揃っています。
贈る人の好みを考えながら選ぶのも楽しい菓子です。
店舗情報
- 瑞宝軒(ずいほうけん)
- 亀山駅周辺の整備に伴い、2021年11月に新装オープンした菓子店。店内には、かつての店でも飾られていた道具や、亀・龍といった菓子のモチーフが掛けられており、歴史を感じさせる。江戸末期の創業以来、亀山の地に根ざした菓子づくりと店づくりが、地域の人々に愛され続けているだけあり、店内はいつも賑わっている。