
高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介
「関の戸 黒糖」
深川屋 陸奥大掾(ふかわや むつだいじょう)・三重県亀山市
September 09. 2025(Tue.)
380年の歴史に
新たな扉を開く
関宿は、東は東海道と伊勢別街道の追分と、西は東海道と大和街道の追分の位置にあり、かつての東海道ではもっとも栄えた交通の要所でした。
この地で暖簾を掲げて約380年の老舗和菓子店が深川屋です。こしあんを薄い求肥(ぎゅうひ)で包み、和三盆をまとわせた「関の戸」は、関宿を代表する銘菓として旅人だけでなく地域の文人墨客から愛されてきました。驚くべきは深川屋は創業以来、この関の戸一筋で、他の菓子はつくらずに代々技術を受け継いできたということ。今のご主人である第14代・服部吉右衛門亜樹(きちえもんあき)さんは17歳の時に、祖父母や両親から「関の戸の味を変えるべからず、関の戸以外のお菓子をつくってはならない」と、家に代々伝わる掟を言い渡されていました。
時は経ち、服部さんが自宅で関の戸の抹茶味を実験的につくっていたところ、それが予想以上に美味しく出来上がりました。長年の御贔屓筋の後押しもあって、販売に踏み切りたいと熱望し、先代である父親に頼み込みます。当然ながら許しは出ずに、父と息子は3か月ほど口を利かないような冷戦状態に。
「多様化が求められる時代に、今までのようにひとつの商品だけをつくっていてはいけない。時代に合わせて挑戦していかなければ!」と粘り強く父親を説得し、ついに抹茶味の「お茶の香 関の戸」が販売されることに。それが2012年の出来事でした。
それから10年後の2022年に登場したのが、3つ目の関の戸「黒糖」です。
「コロナ禍にコーヒーの勉強をして、コーヒーマイスターの資格をとり、関宿にカフェをオープンしました。コーヒーに合う和菓子を日本の素材でつくりたいと思い挑戦したのが、『関の戸 黒糖』だったのです」
こうして服部さんは、和三盆だけだった関の戸の長い歴史に大きな一石を投じ、次の世代へと新たな歩みを始めたのでした。


かわいいサイズ感。





店舗情報


- 深川屋 陸奥大掾(ふかわや むつだいじょう)
- 国の伝統的建造物群保存地区に指定されている関宿のまち並み。深川屋は、そのほぼ中央の位置に店舗を構える。創業380年の歴史を感じさせる深川屋の建物とともに、江戸時代にタイムスリップしたかのような街道の散策もおすすめしたい。