中部和菓子図鑑

高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介

和菓子屋は副業!?
絶品菓子を生んだのは忍者

深川屋 陸奥大掾(ふかわや むつだいじょう)・三重県亀山市

September 10. 2025(Wed.)

銘菓・関の戸は
忍びのアイテムだった!?

「服部家は忍びの家、つまり忍者だったんです。和菓子屋はあくまでも身を隠すための隠れ蓑で、関の戸をお城に届けることで、いろいろな情報を仕入れていました。殿様に仕える家臣や女中から情報を聞き出すためのアイテムだったのです」
そう語るのは、店主の第14代・服部吉右衛門亜樹(きちえもんあき)さん。小学4年生の時に父親から告げられた先祖の歴史に、服部さんは驚きながらもその秘密は誰にも話さずに心のうちにしまっていたと言います。
2019年、深川屋に残る古文書から忍びの記述が発見され、伝え聞いたことが事実だったと証明されました。銘菓・関の戸は、380年にわたり製法を変えず、忍者の末裔によって受け継がれてきたのです。

服部さんは、現代の関宿の発展のために、和菓子屋としての深川屋だけでなく、三重県のお土産品を扱うショップ「関見世吉右衛門(せきみせきちえもん)」と喫茶店「茶蔵茶房(さくらさぼう)」を2022年にオープンさせました。
関宿が多くの人に知られるため、観光客がもっとこの地を楽しんでもらうために、新たな展開に挑戦する現当主。歴史の舞台裏を支えてきた忍者の心意気は、今も脈々と時代を作り上げているようです。さらに、息子さんが深川屋を継ぐこととなり、創業400年に向けて動き出しています。

関の戸を御室御所に納めていた時の荷担箱。
午後になると「茶蔵茶房」のカウンターに
立つ店主と、妻の理佳さん。
茶蔵茶房では、コーヒーと
関の戸を楽しむことができる。
毎日餅生地を練り、あんを炊く服部さんの手は、
驚くほどふっくらしている。
菓子の価格が上がったことを 説明する、
寛政時代の書。

【店舗おすすめ】「メープルナッツ大福」

代々受け継がれてきた製法の関の戸以外の菓子をつくってはならない-。380年守られてきたその掟を破り、関の戸の抹茶味を世に出してからは、他の菓子づくりにも挑戦し、次世代へと歩みを進める14代の服部さん。
新たに仲間入りした商品が、メープルナッツ大福です。

家業に入る前に7年ほどカナダ・トロントで暮らし、一時期、料理人をしていたことから旧知のレストランオーナーから美味しいメープルシロップを教えてもらい、この大福ができたとのこと。

こしあんを包んでいる生地にメープルシロップをまとったアーモンドが入っています。ほんの少しの量が入るだけで、ひと口ほおばれば、上品でスッキリしたメープルの香りが広がります。こしあんとの相性も抜群。

関の戸という名の扉を開いて、次々と新しい和菓子に挑戦する深川屋。これからの未来に、どんなお菓子が登場するのか、多くのお客さまが心待ちにしていることでしょう。

皮に入っているアーモンドと、ふっくらした
生地との食感のコントラストが印象的。
一番搾りにあたるバージン
メープルシロップを使っている。
さらに多様なメニューを味わいたいなら
茶蔵茶房で食べられる洋菓子もおすすめ。
中でも昔ながらの固いプリンが大人気。

店舗情報

深川屋 陸奥大掾(ふかわや むつだいじょう)
国の伝統的建造物群保存地区に指定されている関宿のまち並み。深川屋はそのほぼ中央の位置に店舗を構える。創業380年の歴史を感じさせる深川屋の建物とともに、江戸時代にタイムスリップしたかのような街道の散策もおすすめしたい。

MAP

〒519-1112 三重県亀山市関町中町387
電話番号:0595-96-0008
上部へ戻る