中部和菓子図鑑

高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介

「ちいちい餅」
庵昇堂・静岡市

December 16. 2025(Tue.)

名前の響きがかわいらしい
清水名物の餅菓子

「ちいちい餅」とはなんてかわいらしい名前でしょうか。これは静岡市清水区(旧清水市)を中心とした地域で昔から愛されてきた和菓子で、いわゆる大福餅なのだそう。この地域では、庵昇堂以外の和菓子店でも「ちいちい餅」がつくられています。各店舗によって多少の違いはあるそうですが、基本的なつくり方は一緒。
清水地域の和菓子屋さんには大福餅は販売されていませんが、「ちいちい餅」ならたいていのお店にはあるとのこと。これは地域性を表す興味深いエピソードです。

さて、このかわいらしい名前にはどんな意味があるのでしょうか。由来は定かではないそうですが、形がネズミに似ており、その鳴き声から「ちいちい」と名付けたという説が有力なのだとか。別名が「ちゅうちゅう餅」であると聞くと納得できます。

もち米を蒸し上げ、ついたばかりの生地でたっぷりと包むのは、北海道産小豆を上質糖で煮てじっくりと練りあげたこしあんです。やわらかな生地と丁寧につくられたキメの細かなこしあんとの相性抜群。生地には保存性が高まるといわれる砂糖が入っていないため、日持ちはしませんが、代わりにもち米の風味豊かな味わいを感じられます。賞味期限は、つくった日の翌日まで。もし翌日になって表面が硬くなっていたら、トースターなどで軽く温めるか、フライパンでさっと焼くと、また違った美味しさを楽しめます。

1個から購入することができるので、近所の子どもたちがおこづかいをにぎりしめて買いに来ることもあるそうです。

すべて手作業で丁寧にひとつずつつくられている。
手のひらにちょうどおさまるサイズ。
最後にハケで余分な粉をはらって完成。
まるで赤ちゃんを扱っているよう。
カットするなら「ナイフではなく糸で結ぶ
ようにするといいですよ」とご主人。

店舗情報

お菓子処 庵昇堂(あんしょうどう)
市街地を抜けて、みかん畑ののどかな風景を過ぎた街道沿いにある店。すぐ近くには小学校があり、子どもたちの通学路になっている。幅広い層のお客さまが代わる代わるやってきては、ちいちい餅や季節のお菓子を買い求めていく、地域に愛される和菓子屋だ。

MAP

〒424-0114静岡県静岡市清水区庵原町1781
電話番号:054-366-7109
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