おとなの相談室

知っているようで知らなかった悩みに、専門家がお答えします

銭湯がつなぐ
まちの未来とコミュニティ
(3時間目)

January 28. 2026(Wed.)

1時間目では「銭湯」のいろはを、2時間目ではビギナーに向けて銭湯を楽しむコツを教えてもらいました。3時間目では「ゆとなみ社」の活動を紹介するとともに、まちに銭湯があることで描かれる未来像を、愛知県豊橋市の銭湯「人蔘湯(にんじんゆ)」の店長・奥村明加さんとともに考えていきます。

ー1時間目の記事はこちら
銭湯ってどんな場所?知っておきたい基本と魅力(1時間目)
ー2時間目の記事はこちら
老舗銭湯「人蔘湯」店長が教える銭湯の楽しみ方・基本ルール(2時間目)

人蔘湯 店長
奥村明加(はるか)
愛知県豊橋市出身。後継者不在となった銭湯を事業として継業する集団「ゆとなみ社」の一員。北海道の牧場で働く夢を叶えるべく一度は豊橋を離れるものの、アルバイト店員として親しんだ豊橋の老舗銭湯「人蔘湯」を守りたいという想いのもと帰郷。2022年に2代目店長に就任し、元オーナーである女将と二人三脚で営みを続けている。
https://yutonamisha.com/
https://www.instagram.com/ninjinyu2021

3時間

まちの銭湯のこれまでとこれから

老舗銭湯「人蔘湯」が
紡いできたヒストリー

「人蔘湯」の創業は、戦後間もない1950年頃と聞いています。女将の藤井寿美子さんのお人柄も手伝ってか、地域にかけがえのないコミュニティの場として愛され続けてきました。

2020年、営業中にボイラーが故障してしまい、休業を余儀なくされました。そこに手を差し伸べたのが「ゆとなみ社」でした。女将は若い世代が活躍するゆとなみ社に託す決心をし、2021年に人蔘湯を再開しました。
その後も、女将は変わらずスタッフとして銭湯を守り続けています。元オーナーがこのような形で銭湯の運営に携わることは、全国的にも珍しいそうです。そして2022年には、私が「人蔘湯」の2代目店長に就任して、女将と一緒に切り盛りしています。
「人蔘湯はいいところ」と豊橋のまちに浸透しているのは、ひとえに女将が一生懸命続けてくれたおかげ。町のみんなが応援してくれる、とても恵まれた環境で仕事をさせていただいています。

このように継業がかなう銭湯は幸運なのかもしれません。もしかして、すぐ近くにも、地域に愛され、歴史を紡いできた銭湯があるかも。そんな視点で、まちの銭湯を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

イベントやグッズも盛りだくさん
銭湯に新しい潮流を生む

ただ継業するだけではなく、人蔘湯のことをもっと知ってもらい、たくさんの人に来ていただきたい。そんな想いから、イベントも多く開催しています。子どもたちに銭湯のお仕事を体験してもらう「こども番台」も、地域に根ざしたイベントのひとつです。

不定期で開催している浴室での音楽イベントはとても盛り上がります。銭湯の浴室という空間は音響がよいので、アーティストにとっても演奏していて心地がいいみたいです。
「自分たちが呼びたいアーティスト」を基準に自由気ままにオファーしているので、スタッフ側も楽しみにしています。まずは自分たちが楽しまないことには、何事も続かないという考えは、スタッフみんなの共通認識です。

銭湯ライフを楽しんでいただくきっかけになればと、オリジナルグッズも多く制作していますが、同じようにスタッフ自身が楽しみながらつくっています。さまざまなイベントにも出展して、これらのグッズを販売する機会も多いです。

このような取り組みを軸に銭湯を探してみるのも、これから先の楽しみ方のひとつかもしれません。利用するお客さまが嬉しくなって足を運びたくなる、地域のコミュニケーションのハブになる。そんな役割を銭湯が担えると素晴らしいと思います。

新しい挑戦を続ける銭湯も楽しむ

銭湯の運営に携わり、地域に根づくこと、そしてそれを継続することが大切だと強く感じるようになりました。地元で一生懸命働き、活躍されている方々の「一日の締めくくり」に銭湯を利用してもらえたら、お客さまを迎える側としてはとても光栄です。地域の方々との交流も自ずと増える、銭湯とは本来そういう場だと思います。

そして、これまでになかったイベントや企画などを通じて銭湯という場所を楽しく過ごせる機会も増えています。みなさんの暮らす街や、旅先で、銭湯を見つけて、足を運んでみてください。一日の締めくくりを、ぜひ銭湯で。

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